追悼〜忌野清志郎

    2009.05.11 Monday| 01:34 |
皆様ご存知の通り、去る5月2日、ロックミュージシャン忌野清志郎さんが亡くなりました。

私は高校時代以来の清志郎の長年のファンではありましたが、ファンとしてのスタンスは熱烈とは決して言い難いもので。テレビなどで眼にする機会があれば絶対に逃さないけれど、チケット争奪戦を戦い抜いてまでライブに行ったりはしなかったし、新しい曲が出れば必ず購入して聴いてとまでもいかなかったし。
今の自分が音楽そのものにさほど熱烈でないこともあって、ファン歴こそ長いけどごくごく浅くて薄いファンだったと、自分ではそう思っていました。
清志郎には、昨日行われたロック葬に駆けつけた45000人のファンをはじめとする沢山の熱烈なファンがいます。私程度の薄っぺらいファンがあれこれ書き綴ったりするのはむしろ失礼かも、申し訳ないかもという気持ちが強く、ブログ記事等ではこれまで敢えて取り上げませんでした。
ところが、先ほどNHKで放送していた追悼番組「忌野清志郎 愛しあってるかい?」を観ている内に、滂沱の涙を流している自分に気付いたのです。
別にクールを気取るわけでは無いのですが、私は決して涙もろいほうではありません。それなのに、亡くなって一週間以上も経ってからどうして?と自分でも驚きました。
ちょっと事情があって訃報を耳にしたのが少々遅れたのですが、今考えるとその後の数日間は現実感が無いままに呆然としていたんだなと今更ながらに気付きました。
58歳、若過ぎる死です。かねてよりガン闘病中とのことは聞き及んでおりましたし、一度は音楽活動を復活させたものの再発したとの件もニュースとして聞いてはおりました。
でも、本当に亡くなってしまうなんて、多分、本当には信じてなかったんだと思う。
音楽の神様がもし本当にいたとしたらその寵愛を一身に受けたとしか思えない、あれほど才能と情熱に溢れた人が、そんなに呆気なく亡くなってしまう訳が無い。無意識の内にそんな風に信じ込んでいたのかもしれません。──若くして亡くなった天才ミュージシャンは、沢山いるのにね。

5月4日付けの読売新聞で、作家の角田光代が追悼記事を書いておりました。

訃報を聞いて真っ先に思ったのは、どうしよう、ということだった。清志郎の生の声が聴けない世界で私はいったいどうすればいいのだ。
〜中略〜
完全復活ライブで、今まで以上にパワフルな清志郎のライブアクトを見て鳥肌が立った。神さまだってこの人には手出しできないんだと思った。それで、信じてしまった。
このバンドマンはいつだって帰ってきて、こうして歌ってくれる。愛し合っているかと訊いてくれる。癌転移のニュースを聞いても、だから私は待っていた。完全再復活をのんきに待っていた。
忌野清志郎は、変わることも変わらないこともちっともおそれていなかった。彼の音楽はつねに新しく、でも、つねにきちんと清志郎だった。不変と変化を併せ持ちつつ先へ先へと道を拓き、私たちは安心してその道をついていけばよかった。
〜中略〜
「もう清志郎の声が聴けない、どうしよう」私が言うと彼も「どうすればいいんだろうね」と言った。深夜、私たちは迷子になった子どものように途方に暮れていた。
きっと多くの人がそうだろうと思う。清志郎のいない世界で生きていかねばならないことに、心底途方に暮れている。このバンドマンが創ったものが失われることはない。
私たちはこの先ずっと清志郎の音楽に触れその声を聴くことができる。わかっていても、今はただただ、どうしよう、と思うばかりだ。



先述した通り非常に熱心なファンとは言い難かった私にも、とても共感の出来る記事だった。
音楽を愛し音楽に愛され、そして人々に音楽の素晴らしさを伝え続けていた彼が、もういない。
彼の歌は残っても彼自身はもうこの世のどこにもいない。その喪失感。ぽっかりと空いた心の穴。

NHKの番組を観ていて、その映像のほとんどに見覚えがあることに気付いた。
考えてみれば当たり前だった。80年代、番組中でRCサクセションの黄金期と称されていた時代にはもう、清志郎のファンだったんだもの。
最初に好きになったのは「トランジスタ・ラジオ」、高校時代の友人の薦めだった。当時、私は英国ロックに夢中のいっぱしのロック少女だったのだけれども、日本人ボーカリストでこれほどロックな人がいたなんて!と感動して一発でファンになった。
「雨上がりの夜空に」はめっちゃくちゃクールだと思った。「スローバラード」を聴いて心が震えた。そうだ、私は清志郎が大好きだったんじゃないか。
日本のロックなんて歌謡曲と変わりゃしない決め付けていた高校生の私に、「日本にだって最高に格好良いバンドがあるよ!」って教えてくれた友人とは、高校卒業以来会ってない。彼女も日本のどこかで、さっきの放送を観て涙しているんだろうか。
今はまだ何者でも無い自分への不満と怒り。未来への漠然とした不安と希望。そして輪郭の無い夢。実体は無い癖にやたらと重い、そんな益体も無い感情に押しつぶされそうになって足掻いていた十代の私。
そんな時に聴いた清志郎の歌にどれほど心躍らせたか、パワーを貰ったか。
清志郎の懐かしい映像を観て歌を聴いて、その頃の自分を胸が痛いほどにくっきりと思い出した。夢見る頃はとうに過ぎて、故郷を離れ高校時代を過ごした街を離れ、そんな昔のことなんて思い出すことすらなかったのに。
すっかり忘れたと思っても、脳のどこかに刻み込まれていた記憶は消えないんだね。
確かに清志郎はもういない。
その喪失感を埋めることは出来なくても、それでも彼の残した歌や想いはファンの心の中にいつまでも残るだろう。
そして私の記憶の中の清志郎だってずっと消えやしない。

ご冥福を心から祈ります。


コメント
>司さん

喪失感、本当にそうですよね。直後よりも少し時間が経ってから、思った以上に自分に空いた穴の大きさに気付いてびっくりです。
   
      >自分のロックだったころを失って〜
    
それ!それです。そうなんです。
今の自分が昔ほど音楽に一所懸命じゃないって云う自覚はあったけど、まさに司さんの表現された通りの心境。



>rinzuさん

ジュリーのアルバムは、昔々のレコードとCDとで何枚か持っておりますが、その中で一番好きなのが「彼は眠れない」なんですよ。
rinzuさんのおっしゃる通り、ハズレが一曲も無い。ジュリーのボーカルも、艶やかな中に深みがあって円熟期と言えるのではないかと。
このアルバムとその次の「単純な永遠」が、ジュリーの私的ベストです。

「カタクリ家の幸福」は題名は知っているんですが、観てないんです。
公開された頃が丁度、仕事の忙しさがマックスで私生活がほぼ無い状況だったもので。DVDになってるんですよね。レンタルで探してみようかなあ。
私も「彼は眠れない」大好きです!!ハズレの曲が1曲として無い、素晴らしい完成度のアルバムだと思います!!

ところで清志郎さんが「カタクリ家の幸福」という三池崇史監督のブラック・コメディー・ミュージカル・カルト映画(なんて表現!だってもの凄い映画なんですもの)で、沢田さんと共演されていたのを御存知ですか?
アレを観て、清志郎さんを好きになりました。(^_^;)

なんか・・・色々思い出して淋しくなってしまいますね・・ホント。
  • rinzu
  • 2009/05/13 4:08 PM
きゃん様またご一緒です。

清志郎は私も「そんなにふぁんじゃない」と思っておりましたが、今回の訃報を知りものすごい喪失感が襲ってきました。

自分のロックだったころを失ってしまった・・・そう感じて
おりました。

もう今は会う機会もない清志郎の大ふぁんだった友人のことを思い出しておりました。

  • 2009/05/12 12:33 AM
>1号さん

熱狂的とは言いがたいファンだって自分では思っていたんだけどね。
追悼番組を観てるうちに、自分はこんなに長い年月、清志郎を観てたんだな聴いてたんだなと気付いちゃって、ついつい上記のような文章を綴ってしまいました。
上にもちょっと書いたけど、亡くなったのを自分が知ったのが訃報の翌日だったのです。
で、自分がそれをちっとも知らんかったことに呆然としちゃったり、なんだかグルグルしちゃったり。

     >こんなコトぢゃあ駄目だよなあって思うよ

そうだよね。本当にそうだよね。うん。



>rinzuさん

後から後からじわじわと、ボディーブローのようにショックが身体に染み入ってくる感じです。

清志郎がジュリーに提供した曲、「KI・MA・GU・RE」ですよね。あれはすっごく良い曲でした。
あの曲が入っている「彼は眠れない」は、ジュリーのアルバムの中で一番くらいに好きなんです。吉田建さんがプロデュースしていることもあって、ロック色が強くって。
ジュリーと清志郎のデュエット、聴きたくなっちゃった…。


きゃん様は清志郎さんのファンでいらしたのですね。
それでは今回の訃報はショックでしたでしょうね・・・。

私はそれほどファンというわけではないのですけれど、ジュリーに提供して下さった曲が結構な人気楽曲なので、印象に深いんです。
素敵な曲でしたもの。

心より哀悼の意を表させていただきます・・。
  • rinzu
  • 2009/05/11 4:30 PM
きゃんさんも好きだったんだね、キヨシロ→ のコト。
ナンか今も朝の情報番組ちらりと観ちゃって
放心しちゃっていたところなんだー。

そーだよね、どーしてイイか判んないよね、ホント。
フツーに又、元気になるもんだって思っていたもん。

未だ歌は聴けないんだけれど、
こんなコトぢゃあ駄目だよなあって思うよ、うん。
  • 1号
  • 2009/05/11 7:54 AM
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