罪と罪の狭間「リベリオン」

    2007.06.09 Saturday| 02:25 |

ようよう観ることが出来ましたよ、「リベリオン」です。
感想はですね、もう、机をバンバン叩きたくなるくらい、どうして良いか判らないほど萌えな映画でございましたよ。
ほぅっ…(ため息)。
いつも通り、ネタバレばんばん。ご注意あれ。


「リベリオン」(2002年、アメリカ)

第三次世界大戦後の世界。戦争や犯罪の要因は人間感情にあるとの判断から、感情抑制薬プロジウムの服用が義務付けられ、徹底した管理体制の敷かれた国家が成立していた。
感情を喚起するものは全て罪であり、音楽や文学、芸術は感情を妄りに発動させる悪しきものとされ、感情を持つ人間は感情違反者=反逆者として処罰される運命にあった。
反逆者摘発の任に就く「クラリック」のジョン・プレストン(クリスチャン・ベイル)は、銃と武道の究極技であるガン=カタの達人。ある時プレストンは、絵画等の芸術作品を守ろうとしていた反逆者の家を襲撃し殲滅する。帰途プレストンは、パートナーであるエロル・パートリッジ(ショーン・ビーン)が一冊の詩集を手にしていることに気付く。
パートリッジの行動を怪しんだプレストンは彼の行動を探り、遂にはパートリッジが感情違反者であることを突き止め、彼を撃ち殺してしまう。
実はプレストンにはかつて妻がいたのだが、感情違反者として数年前に処刑されていた。妻は、そしてパートリッジはなぜ違反者になったのかを考えていたプレストンは、うっかりプロジウムの瓶を割ってしまう。それが契機となり、プレストンはプロジウムの摂取を怠るようになる。
パートリッジを射殺したプレストンは、感情違反者メアリーと知り合う。逮捕した彼女に生きる目的を問われ、確かな返事が出来ない自分に気付き動揺したプレストン。プロジウムの未摂取により感情を蘇らせていた彼は、任務中に耳にした音楽の荘厳さに涙し、子犬の可愛らしさに心魅かれ、遂には、自らが手を下したパートリッジの遺体の側で涙し許しを請う。
完全に感情を取り戻したパートリッジは、感情を抑制することで人々を完全にコントロールしようとする管理社会のシステムの欺瞞に気付き、レジスタンスと共に立ち上がることを決意する…。


この作品のショーンはとにかく素晴しい!と聞いてはいたのですが、噂に違わぬ素敵っぷりにもう頭がクラクラしました。
襟の高い、まさに聖職者然とした衣装がとてつもなく似合ってる。禁欲的な黒の衣装に豪奢な金髪が映えて、スタイルの良さや動きの美しさを際立たせています。
感情の無いクラリックはまるで人形のように冷たく固い表情をしているはずなのですが、パートリッジは実は感情抑制剤を摂取していないので、プレストンの非情な行動を間近にしては目を泳がせ何とも切ない表情をするのです。この、抑制された微妙な感情表現が実に素晴しい。
違反者であることを悟られたパートリッジはまるでプレストンがやってくるのを待っているかのように、一人廃墟で詩集を読むのですが、まあ、この場面でのショーンの美しさといったら!
この映画の撮影時、ショーンは既に40代。若い時分(と言っても、私はショーンの若い頃の作品ってまだ「シャープ」くらいしか観てないんですけど)に比べれば、皺も目立つし肌や顔のラインも衰えてきている。単純に容貌的なことを言えば、若さと美貌を誇る俳優なんていくらでもいるし、その中でショーンが際立った美形かと言うとそうは言い切れないのは十分承知。
でもね、顔立ちとか表面的な美しさではなくてその佇まいが、ショーンの在りよう自体が美しいのです。
月明かりの差す教会の廃墟、長い手指でイエーツ詩集捧げ持ち、プレストンに語り聞かせるかのように朗読するパートリッジの姿は、それ自体が一幅の絵画、まるで生きた芸術作品のようにすら見えます。

パートリッジの行動はあまりにも無造作過ぎます。自らの「犯罪」を隠そうとしているようにはとても見えない。
摘発現場からイエーツの詩集を持ち出したのは、むしろ、プレストンに違反者であることを知らせるためにやったように思えました。
一人廃墟にて詩集を読む姿は明らかにプレストンがやって来ることを見越したもので、まるで待っていたかのようだった。プレストンに銃を向けられた時、パートリッジも自らの銃に手を伸ばしはするのですが、プレストンのガン=カタの能力を持ってすればパートリッジに勝ち目があるとは思えないし、むしろ、プレストンが引き金を引くためのきっかけを作るためだったのではないでしょうか。
なぜパートリッジはそんな自殺的行動に走ったのか。映画の中では明確には示されません。ただ、多くのヒントが散りばめてあります。
プレストンの妻は数年前に感情違反で処刑されているのですが、どうやら、その摘発者はプレストンの「パートナー」だったようです。それって、パートリッジのことだよね…?
プロジウムで完全に感情を抑制されていた当時のプレストンは、妻の処刑の際にも何らの感情の揺らぎは無かったのですが、もしかしてパートリッジは、それを自らの罪として考えていたのかもしれない。パートリッジが何時からプロジウムを摂取しなくなったのか、そのきっかけが何だったのかは映画では描かれていないのだけれども、プロジウム摂取を止めて感情を取り戻した時、仕事上とは云えパートナーであるプレストンの妻を摘発した自分を許せなくなったというのは想像に難くない。
感情に目覚め、音楽や文学や全ての美しいものに感動すること、心のままに喜び哀しむことを知ったことで、パートリッジは現実の世界に絶望してしまったのかもしれません。

メアリーとの関係について、パートリッジの遺品にメアリーとの2ショット写真が残っていたことと、プレストンの「恋人だったのか?」という質問にメアリーが否定しなかったことで推測せざるを得ないのですが、パートリッジの射殺時にはメアリーはまだ摘発されていなかったことを考えると、ちょっと違和感を感じました。
愛する人が出来たこと感情を蘇らせたのだとしたら、その人を一人置いて、自殺行為に走るっていうのはないんじゃない?って思ったのです。
彼らが本当に愛し合った恋人同士だったとしたら、残されたメアリーは辛いよね…。メアリーがきっかけで感情を蘇らせたのか、それとも、感情を蘇らせたことでメアリーと知り合い愛し合ったのか、でも、そのために自らの罪を許せないという境地に至ったのだとしたら。悲しいな、パートリッジ。

ショーンのことばかり書いてますが、プレストン役のクリスチャン・ベイルもとても良かったです。
毎度お馴染み例によって例のごとく名前しか知らなくて、観たことは全然無かったのですが、前半での感情の無いクラリックの演技と、感情を取り戻し人間らしい存在に立ち戻りってからの繊細かつ豊かな感情表現の対比が際立っていた。
知的で整った容貌、バランス良く無駄なく鍛えられたボディも眼福モノでした。

個人的な意見としては、ガン=カタはもうちょっとどうにかなんなかったのかな?
銃と武道を合体させた究極技ってことなんだけど、どうみても、単なるカンフーです。
ガン=カタのシーンになると、急に昔の香港映画みたいになっちゃうんだもん。訓練シーンでは剣道まで出てきちゃって、間違っちゃった東洋趣味って感じ。どうにも漫画チックで、アクションシーンだけ取り上げるとB級映画って言われても仕方ないような気が…。
物語の設定は興味深いし、俳優陣はキャラクターも立っていて演技も素晴しくて云うこと無いのに。
計算されつくした究極技という意味でのガン=カタの設定は悪くないだけに、動きのベースをカンフーに置いたっていう点がちょっと安易だよね。
コメンタリーでクリスチャン・ベールが、娯楽映画として派手なアクションシーンが必要だったって語ってるけど、もうちょっとやりようがあったと思うのは私だけじゃないと思うな。

映画全体としては、ジョージ・オーウェルの「1984年」が下敷きになっているんじゃないかな。
全体主義国家に統治された近未来世界の、感情や行動を完全に規制され監視されることの恐怖を描いた作品です。「リベリオン」ではファーザーと呼ばれる統治者が常に路上や建物内のスクリーンでアジテーションを飛ばしていますが、、「1984年」ではビッグ・ブラザー(偉大なる兄弟)という独裁者がいて、どちらの作品でもその存在に実体が無い(らしい)ところがよく似てる。
「1984年」のラストは背筋が寒くなるようなどうにも救いの無い終り方だけど、「リベリオン」は最後に希望のある終わり方になっている。映画の場合は、そのほうがいいよね。

コメント
>1号さん

最初にお薦めいただいたのは随分前だったのに、今頃になってやっと観た私の馬鹿!馬鹿!(ポカスカポカスカ)って感じです。
劇場公開時にあまり話題にならなかったっていうのは、何故かしら? 特定の感性を持った人の琴線にのみ、ピキーン!って引っ掛かるタイプの映画だったのかな。私はモロに引っ掛かりましたよん。

クラリックの身につけてるモノ、確かにどれも格好良い。服装は一般的に着られるデザインではないけど、時計は欲しくなりますね、確かに。イエーツの詩集も読んでみたくなった。

クリスチャン・ベイル、30垳採未辰得┐ぁ「リベリオン」の時だって、鍛えた身体ではあってもスラッと細身の印象なのに。筋肉は脂肪より重いらしいけど…。
検索したら、不眠症でやせ細ってしまっている男の役なんだね。凄まじいまでの役者根性、今度、借りて観てみます。

ユルゲン、いかにも1号さん好みだなと思った次第(笑)。



>alexさん

そう、最初に1号さんに薦めていただいたのは随分前なのです。今頃になって萌えてる私はホントに間抜けというかノロマというか…。
ショーンの登場シーンは本当に短かったけど、そのシーンの一瞬一瞬が全て見逃せないほどに素敵だった。オーディオコメンタリーで監督がショーンを絶賛してたけど、まさに宜なるかな。
完全にショーン目当てで観たんだけど、クリスチャン・ベイルもとても良くて、掘り出し物映画だなーと。

>今度のオフ会では是非机をバンバン叩いて

是非!是非とも!!語りたい!!!

 >この作品のベースは「1984」と「華氏451」

ああ、やっぱりそうなんだ! 上↑の日記を書いた後、そういや「華氏451」にも似てるなと考えてたの。
私はどちらも小説で読んでいるんだけど、機会があったら映画化されたほうも観てみようかな。

観ていると低予算映画って感じはあまりしなかったんだけど、監督や美術などのスタッフの努力の成果かしらね。「カートを探せ!」そうなんだー。返却前にまた観るつもりなので、意識しながら観てみようっと♪

 >ユルゲンは私もソソラレマシタ

脇役に光る俳優がいるっていうのは、良い映画の必須条件だよね、やっぱり。
わ〜い!きゃんさんにも気に入っていただけて私も嬉しいです〜♪

ね、ね、突っ込みどころ満載でも、ものすご〜く語りたくなりますでしょ、この作品!今度のオフ会では是非机をバンバン叩いて語りましょう!!

ショーンがちらっと出てるとの噂で期待せずに観に行ったのですが、劇場出て来る時にはいろんなシーンが頭をグルグル回って放心状態でした。
ショーンの佇まいの美しさ、イェーツを朗読する声の素敵さ。ついでにクリスチャンの表情の変わり方。
手袋脱いでじかに手すりに触ってみたり、子犬にやられちゃったり(笑) 低予算映画でも、俳優と脚本で濃い作品になるもんだと思いました。
批評家にはボロカスに言われた作品ですが、カルト的人気がアメリカでも出て、凄かったですよ!最大のファンサイトには、スタッフからストーリーボードの提供やトレーニングシーンのビデオなどの提供もあってめちゃくちゃ充実してます。

ちなみに、この作品のベースは「1984」と「華氏451」のようです。(これは監督も認めてます)
本を焼くシーンは「華氏451」から。この作品も思想統制系で、本を読むことが禁止されてる世界なんです。名画を焼くシーンなんかは思いっきり同じなので、お暇な時にでもご覧いただくとどのシーンがどこから来たのか分かって面白いですよ。

低予算で役者の確保が難しかったので、「リベリオン」には監督があちこちに出ていて、「カートを探せ!」なる楽しみ方もあります(爆)

あの腕時計は私も欲しくて欲しくて〜〜!!
でも、高くて手が出ませんでした(^_^;

うはっ。1号さんお勧めの「マシニスト」も、クリスチャンの役者根性を見るには最適かも。昨日から公開されてる「プレステージ」でも、主役その1をそれはそれはにくたらしく演じてますんで、気が向いたら是非。正統派美形のヒュー・ジャックマンを差し置いて、演技力光ってますよん♪(ヒューも演技力あるんですけどね・笑)

ユルゲンは私もソソラレマシタ、はい。
  • alex
  • 2007/06/10 2:13 PM
きゃんさんに気に入ってもらえて、嬉しーよーんv

「今いちばん習得したい技はガン=カタ!!!!」
としばらくの間騒いでおりました、これ観たあとの自分!
どーゆーわけか劇場公開時、それほど話題にならなかったのだ。
勿体ない〜。
そのせーなのかナンなのか、
パンフレットのお値段がめちゃくちゃあがっていて
それにも驚きましたです。

クラリックの身につけているモノが
いちいちくらっくらにカッコよくって
特にあの腕時計は欲しくてたまりませんでした。

> 子犬の可愛らしさに心魅かれ
あのシーン、感動しつつも爆笑してしまいましたよ、劇場で!
凄過ぎるよ、ベイル(笑)!

> バランス良く無駄なく鍛えられたボディも眼福モノ
んぢゃあついでとゆってはナンですが、
そのあと30垳採未靴督んだとゆー「マニシスト」(2004)
も落ち着いたら是非是非〜。

ちなみにこの作品でいちばんのごひーきは
ユルゲンなのでしたv
  • 1号
  • 2007/06/09 9:06 AM
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