「ザ・ロード」〜試写会ご報告と感想

    2010.06.19 Saturday| 18:35 |
6月17日木曜日は、待ちに待った「ザ・ロード」の試写会でした。
折悪しく仕事により多忙を極めていたのですが、各方面に無理を言ってお願いして、試写会場に駆けつけることができました。
ええ、そうなんです。ツイッターでつぶやいたっきり、ブログでお知らせするのをうっかり失念していたのですが、「イースタン・プロミス」、「アラトリステ」に引き続き、今回の「ザ・ロード」でも招待状を引き当てることが出来ました!
日頃はとことんクジ運が無く、前回記事の「アイアンマン2」ジャパン・プレミアもalexさんのご好意で同行させていただいた次第なのですが、ヴィゴ主演作品に限っては試写会三連勝!
クジ運は無いけど、どうやらヴィゴ運はちょっとだけあるらしい。果報者なわたくしです。
無論、応募ハガキも沢山(と言っても10枚くらい)出しましたよ。ネットで応募するよりも、ハガキのほうが当選しやすいような気がします。
まあ、当たり前と言えば当たり前。費用も手間も掛からないネット応募より、わざわざハガキを買って、あて先と応募要項を書いて、投函してと云う手間の掛かるほうが競争率は低いに決まってる。
ちなみに、ハガキには応募要項の他に、自分が如何にヴィゴのファンであるか、この映画もどれだけ公開を待ち望んでいたか、試写会に当たっても当たらなくてもいずれにせよ公開後は観に行くが、出来れば試写を観てブログに記事を書きたい、などといった内容をチマチマと書き連ねました。
ヴィゴ愛ゆえか当選狙いの姑息な手段かは、自分でも首を捻るところ。うーん、両方と云うことにしといてください。
実際問題として、こんな手法が通用しているのかどうかは判りませんが、とりあえず三連勝なので良しとしよう。

さて今回の試写会、会場は中野にある「なかのZERO大ホール」でした。
大賑わいの商店街やカオスな魅力の中野ブロードウェイがある北口とは反対側、南口から徒歩8分ほどの場所にあります。
18時半会場、19時開演とのことだったので、18時頃に到着。
「アラトリステ」の時はヴィゴの来日が噂になっていたので張り切って16時には現地到着していたのですが、今回はそんなサプライズは無さそうだし(多分撮影中だろうし、W杯開催中でもあるし)、ギリギリまで仕事を片付けてから出掛けたので、そのくらいの時間になっちゃいました。
既に会場の外にまで行列が出来ておりました。建物横の狭いスペース、今日は晴れてるからいいけど、雨降りだったら並ぶの大変そう、などと思いながら並ぶこと暫し。
仕事終りで来る人も多いだろうから、18時を過ぎた頃から急激に混み出しました。私たちの背後の列はドンドン長くなっていきます。行列整理の警備員さんは居るんだけど、もしかしてこの一列じゃ並びきれないんじゃない?と思い始めた頃、予定より早い18時20分頃に開場となりました。

ネットで調べたところ、なかのZERO大ホールは全部で1292席。まだ新しいのか綺麗で、二階席もある立派なホールです。
ここで二日連続で試写会をやるとは、なかなか力が入っているではないか! しかし、一般公開後の関東での上映はシャンテシネだけなんだよね…力の入れどころのバランスが悪くないか?…いや、まあ、配給会社さんにもいろいろと思惑があるのでしょう。
試写会ご招待いただいたんだから、ケチつけてる場合じゃない。

そして、19時。いよいよ開演です。
司会者が壇上に上がることもなく、内心で恐れていた芸能人が登場することもなく、淡々としたアナウンスの後、上映が始まりました。
…よーく考えてみれば、あくまでも試写会であってプレミアじゃないんだから、芸能人なんて来る訳も無いのにね。どうもナーバスになっていたらしい。

以下、映画「ザ・ロード」の感想になります。
一般公開前と云うことも考慮し、ネタバレは出来るだけ避けたいところですが、ネタバレ一切無しでは記事が書けそうにない。
原作も既に翻訳本が出版されておりますので、ある程度ネタバレが含まれますこと、ご了承ください。



「ザ・ロード」(2009年、アメリカ)

理由の定かでない災害によって文明を失ってから10年以上経つ世界。
太陽は見えず、寒冷化が進み、動物も植物も次々と死滅。僅かに生き残った人間も保存食を見つけるしか生き延びる手立てはない。そうしなければ、餓死するか自殺するか、さもなくば、理性を失った人間の餌食になるかだ。
そんな荒廃した道なき道を、父と子は、寒さから逃れるため、南を目指して歩き続ける。
子は父を信じ、父は子の未来を願いながら…。(goo映画より引用)



予想通り、いや、期待以上、想像以上に素晴らしい作品でした。
俳優の演技、衣装、小道具、美術が実にリアル、映像の全てに嘘臭さが微塵も感じられないのが凄いです。
核の雲に覆われ寒冷化の進む世界。荒野、立ち枯れて倒壊を待つだけの木々、廃墟、散乱する遺体や遺骨、生命の欠片すら見いだせない死に果てた海。
灰色の雲に覆われた空の下、そぼ降る冷たい雨に打たれて震える親子の姿には、観ているこちらも身震いをしてしまうほど。
残酷なまでにリアルな映像、凍てつく寒さや濡れる不快感、腐敗や汚れによる悪臭がまるで現実のものであるかのように観客に迫ってきます。

よくある終末映画のような覇権を争う権力闘争も無ければ、爆弾がどんじゃか爆発したり、どうやって銃弾を補充するのか首を捻ってしまう派手派手しい銃撃シーンも出てきません。未知のウィルスや宇宙生物に脅かされたりもしません。
この映画で描かれる恐怖や暴力は、ただ生き延びるために必死な人間たちによる、容赦の無い命のやりとりです。奪い合い殺し合う人間のエゴと、人間を食物と見做して狩ろうとする人食いたちの恐ろしさ。
映像表現として巧みだなあと思ったのは、食料として備蓄されている人々やそれに伴うカニバリズム的表現、殺されたり自殺した人々の遺体や晒された人骨などの描き方です。
凡庸な映画だったなら、喰われるために切り刻まれた人体やらミイラ化した肉体などを強調し、時にはアップで時にはスロー映像で映し出したりしそうなものですが、「ザ・ロード」ではそうした表現方法を取っていません。
原作にある以上、そうしたシーンは何度か出てくるのですが、カメラを流しながら映すような手法なので、画面上ではほんの少ししか映し出されないのです。
私見ですが、これはもしかすると、「人間の目線」を意識した映像なのかなと思ったりしました。
例えば、真実怖いものやグロテスクなものを見た場合、一瞬凝視してしまった後、パッと眼を逸らすまたは眼を瞑る、そういう行動を取ってしまうのが人間として自然な態度だと思うのですね。
「ザ・ロード」の映像はそんな感じなのです。
野に晒された頭蓋骨やベッドに横たわる遺体をおずおずと(カメラが)遠目から眺め、喰われるために飼われている人間を見てしまった時は、眼に入れたくないとばかりに必死で(カメラの)目線が逸らされる。
しかし、そうして少ししか映し出されないことによって想像力が喚起され、恐怖感がじわじわと高まっていくのです。お化け屋敷のような作り物的な恐怖とは違う、映像の中で彼等がリアルに体感している真の恐怖を、観客も同時体験させられている、そんな気すらしました。

ホラー映画やB級映画によくあるように、カニバリズムや血塗れの殺戮シーンなどセンセーショナルな映像を沢山盛り込めば、話題にもなるし下世話な興味を引くことは間違いないでしょう。
もしかすると、米国での興行収入も上がっただろうし、上映館数も増えたかもしれない。
しかし、そうした安易な手法を避け、原作のイメージを損なうことなく淡々と恐怖を描いたことが、この映画の品格の高さに繋がっているのではないかしら。
万が一にもそうした表現をしようとしたら、原作者からNGが出たであろうことは想像に難くないし、主演であるヴィゴも拒否反応を示したと思う。しかし、監督は映画の興行的成功をも考えねばならないはず。
まことにもって嘆かわしいことではありますが、映画のヒットを狙う上では、センセーショナルな映像を全面に押し出したほうが話題になるし、興味本位の観客が増えるのは間違いない。
実際に米国の観客の中には、カニバリズム表現に興味を持って観に行ったホラー映画ファンもいたと聞きました。

他にも例えば、判りやすくて一般受けするハッピーエンドで終わらせるというやり方もあったかもしれないのですが、この映画はそんな安直な結末を拒否しています。
親子がボロボロになりながらも、「善き者」がひっそりと群れ集っている集落に辿り着くとか(他の映画で既にありましたが)、スーパーマンのように頑健で強力な父親が息子を連れて、希望に向かって歩み続けるとか。
でも、それは「ザ・ロード」ではない。全く、違う作品になってしまう。悲しいけれど、辛いけれど、この映画はああしたラストシーンでなければいけないのです。
ジョン・ヒルコート監督は、原作の持つ残酷さと高潔さを損なうことなく映像化する意志を貫いた。
そのセンスと感覚、志の高さに拍手を贈りたい。


印象に残ったシーンをいくつか。
先ずは、半壊した教会で親子が抱擁するシーンです。公式サイトで壁紙配布もされてますので、ご覧になった方も多いかと。
画像で見た時も、「なんて美しいシーンなんだろう…!」と思いましたが、物語の流れの中で観るとその感動は一際でした。使い古された表現ですが、まさに一枚の絵画、それも宗教画のように美しく切なく感動的でした。



もう一つは、コガネムシのエピソード。南を目指して、ひたすらに歩き続ける親子。ある時息子は、一匹の虫を見つけます。「それはコガネムシだ」と教える父親。
多分、世界の崩壊後に生まれたこの少年は、虫はおろか生きている生物をほとんど眼にしたことが無いのではないかしら。生物のほとんどが、絶滅するか人間によって喰いつくされてしまった世界。驚きと共に見つめる親子の前から、コガネムシは飛び立っていきます。
何故、虫が生存してたんだ?と云う疑問が生じそうですが、これはそれほど無理な設定ではない。
ある種の昆虫は風や海流に乗って長い距離を移動することで知られています。有名なアサギマダラと云う蝶は2000kmもの移動記録があるし、カナダからメキシコまで3000kmを移動する蝶もいるとか。
この映画において、親子が歩き続けている北米大陸では生命の欠片すら見いだせなくても、もっと南の地域、またはどこか洋上の孤島なら生物が生き延びている可能性だってあるでしょう。
そして、少年が見つけた虫がコガネムシであると云う点。これは重要な隠喩のような気がします。
コガネムシと言えば、スカラベです。古代エジプトでは太陽神と同一視され、復活と再生の象徴とされた聖なる昆虫です。
復活と再生。自分たちを「火を運ぶ者」として位置づけた親子にとって、それは夢であり希望。
旅する虫として一般的な蝶類ではなく、敢えて聖なる虫コガネムシを登場させているところに、このシーンが単なる映画のワンシーンではなく、意図的で寓話的なエピソードであることが伺えました。
ところでこのシーン、原作にあったかなあ? 
私の記憶には無いのだが、暫く読み返してないので断定出来ません。一般公開前に読み返そうと思っているので、その際、確認することにしよう。


さーて、お待たせしました。出演俳優についてです。
主演の父親(原作ではMAN=男、ですね)は、ヴィゴ・モーテンセン。
以前に原作のレビューにも書きましたが、ヴィゴの人となりを少しでも知っていたら、「ザ・ロード」はもしかしてヴィゴをイメージモデルに書いた小説なのでは?と考えてしまうのではないかしら。
それくらい、この父親像はヴィゴのイメージにぴったり。活字の段階でそう感じたくらいだから、映像化されたらどれほどハマるんだろうとアレコレ想像していたのですが…現実は創造の遥か上に存在しました。
上の記述で、映像に嘘っぽさがまるで無いと書きましたが、ヴィゴの演技がこれまた凄まじいまでにリアリティに溢れています。
なんのかの言っても所詮は作り物である「映画」ではなく、どこかのパラレルワールド、滅亡した世界で息子を守り必死で生き延びようとしている男の姿をドキュメントフィルムとして収めたんじゃないか? そんな錯覚を引き起こさせられるほどに、リアルで鬼気迫る演技なのです。

実際に映画を観る前のことですが、どこかの映画サイトが「アラゴルンの片鱗すら見えない」とか書いているのを読みました。少しでもヴィゴを知っていたらそんなの当たり前のこと。だって、「ザ・ロード」でヴィゴが演じているのは、アラゴルンじゃないんだから。
アラゴルンを演じている時、撮影以外の時間帯にまでヴィゴとアラゴルンが一体化していたことは有名な話ですし、その後に出演した映画でも、それぞれの役柄にとてつもないほどに没頭し、演技を超えてその人物に成りきってしまうのが俳優ヴィゴ・モーテンセンですからして。
個人としてのヴィゴを消し去り、役柄のその人物に成りきるのがヴィゴの俳優術だと私は思っていたのですが、ところが、この映画では少しだけ違いました。
画面の中の父親の向こう側に、ヴィゴの姿が透けてくるような気がしたのです。もちろんそれは、ヴィゴが役に成りきってないとか、ましてや演技が拙いという訳では全くありません。そうではなくて、この作品のこの父親は、ある意味、ヴィゴ自身の姿なのではないかと思うのです。
この父親には名前はありません。原作でも映画でも固有名詞は一切出てこないのです。これはもちろん、原作者に確固たる目的があってのことだと思う。
登場人物に名前を付ければ、必然的にパーソナルイメージが生じます。例えば何国人であるとか、北欧系だったりアイルランド系だったりユダヤ系だったりとかが、名前からは推測できます。出身地や人種が推測できれば容貌も推測できるし、宗教や生活環境が推測できれば、ある程度の人となりも推測可能になる。
原作では、この父親の年齢や容貌、人種を推測させる描写はほとんどありません。
この男は一つの作品の中における一人の登場人物であると同時に、人類の普遍的な、斯くあるべき父親の姿、その象徴なのではないか、私はそんな風に考えました。
そしてヴィゴは、世界的有名俳優であると同時に、一人の生活者であり父親であることを大切にしている人だと思う。ヴィゴもまた、「ザ・ロード」のMANとなんら変わりは無い、息子を大切に思う一人の父親なのです。
それ故に、この役柄を演じているヴィゴには、別の役柄、普段の演技では一切見せることのない、素のヴィゴ・モーテンセンの姿がチラつくのではないかしら。
むしろ、それは必然であり当然であり、それが故にこの役柄を演じるヴィゴの演技は壮絶で、素晴らしいのではないかと思うのです。

そしてまた、ヴィゴが絶賛した子役コディ君の演技がまた凄い。あまりにもナチュラルすぎて、最早演技には見えないほどに凄い。
個人的偏見ですが、私は子役の演技にはどうしても「やらされてる感」があるように感じ、達者であればあるほど苦手だったりします。表現が悪くて申し訳無いのだけれども、猿回しの猿を見ているような物悲しさを抱いてしまう。もしくは、小生意気な子供の「僕って上手でしょ?」と鼻高々な姿を想像して、気が萎えてしまう。
ところが、撮影時11歳だったはずのコディ・スミット=マクフィーには、そうした臭みが全く感じられないのです。
その唇から飛び出すのは台詞ではなく、終末の世を父と二人きり、必死で生きている少年の言葉。
その涙はトレーニングの成果でもましてや目薬のお陰でもなく、自然な感情が生んだ真の哀しみ。
掛け値無しで、彼の演技はそう見える。表情を大げさに変えるわけでも無いのに、目線や口の開き、微細な頬の震えが少年の心情を的確に表現した、コディ君。
まさに、恐るべし11歳。
また、いつか、ヴィゴとの共演があるといいなあ。ヴィゴもきっと、そう願っていることでしょう。
蛇足ですが、映画の中の少年は、お母さん似でしたねえ。素のコディ君とシャーリーズ・セロンが似てるとは全く思わないのですが、映像の中では本当に良く似ています。
母の残したニット帽を少年がかぶっている、と云うこともあるだろうけれども、伏目がちにした目元や、少し開き気味になった時のふっくらとした口元などそっくり。カメラや照明の位置、表情の作り方などを工夫したのかもしれないけど、思ってもみなかったので少々驚きました。

妻役は、自ら望んでこの役を志願したと伝えられるシャーリーズ・セロン。元モデルの経歴を持つ美人女優として有名ですが、アカデミー主演女優賞を受賞した名女優でもあります。
彼女の名声に配慮し出番を増やしたと噂されていたことから、映画の仕上がりに悪影響が無いか危惧していたのですが、幸いなことにそれは杞憂に終わりました。
原作では妻が登場するシーンはごく少なく、男(父親)が去っていった妻を回想する4ページほどのシーンのみです。
映画ではそのシーンも丁寧に描いておりますが、その他にも何度か、世界が崩壊する以前の妻との生活が、フラッシュバックのように挿入されます。
それは、冷え切った灰色の現実の中で、男が見る昔の夢。咲き乱れる草花、降り注ぐ陽光、色彩に溢れた平和で穏やかな世界、愛する妻と微笑みあう時間。哀しいほどに美しい思い出。
思い出が美しければ美しいほど、現実の過酷さがより一層強調されます。
妻との回想シーンが頻繁に出てくることだけが原作とのほとんど唯一の相違点なのですが、映像表現としてはむしろ成功していると思いました。



世界の崩壊後に生まれ、こうした世界しか知らない息子に、父は教え諭します。
自分たちは「善き者」であること。「心に灯る火を運ぶ者」であり続けなければならないこと。
物心がついて以来、飢餓と恐怖にさらされ続けてきたはずなのに、他人を思いやる心、他人を信じようとする心を損なわず成長した、まさに奇跡のような少年。
復活と再生の暗喩。
父親の死。

ラストシーンで、少年は「善き者」(映画の役名はVeteran=習熟者または退役軍人の意もある)と出会います。
男は、子供を二人とその母親、そして犬を連れていました。
実に皮肉な遭遇だと思いました。
物語の途中、少年は生まれて初めて、自分以外の子供を見かけます。その子と会いたい、話したいと訴える少年に父親は「子供なんて居るはずが無い」と叱り、引き立てるようにしてその場を去るのです。
父親にしてみれば、自分たち以外の他人は全て敵です。少年には「善き者を探すんだ」と語っても、本音としてはそんな人間がこの世に残っていることなど、信じてはいないのでしょう。
地下の隠れ場所に潜んでいる時、地上を歩き回る音を聞いた少年は「犬だ!」と喜びますが、父親は「もし犬だとしたら、連れている人間がいるはずだ」と危惧し、沢山の食物と隠れ場所を放棄し、逃げる道を選択します。
父の死後、少年が出会った善き者たちは、二人をずっと探し、追っていたのだと告げます。無論、それは、二人と合流し保護するためだったに違いありません。
そう、少年が見かけたもう一人の子供も、足音を聞いた犬も、その存在は現実だったのです。
例え、父子と善き者たちが早くに出会えていたとしても、傷つき病んだ父親の死は遅かれ早かれだったことでしょう。しかし、最愛にして生きる目的そのものであった息子が、自分の死後も一人ぼっちにはならないと知っていたら。死の瞬間、父親は少しは心穏やかだったのではないでしょうか。
ここでもこの物語は、容赦なく残酷です。
善き者たちと出会いが未来への希望に繋がり映画が終わる…といった、都合の良い夢物語には決して終わらせない。
どこまでも現実的で、覚めることの無い悪夢。それが「ザ・ロード」の世界の一つの真実ですが、その絶望的な世界の先には、朧な、本当に幽かではあるけれども光が見え隠れしている。
映画のラストシーンで確かにそう信じられたことで、私はこの作品が傑作であると断定させていただきます。

原作世界を忠実に再現、再構成しているにも関わらず、単なる映像化では終わっていないのが実に素晴らしい。一つの映画作品として、世界を完全に創りあげています。
繰り返しますが、まさに傑作。それ以外に言葉が出てこない。
出来るだけ沢山の方に、スクリーンでこの作品を観て欲しい。
涙脆い方は、ハンカチとサングラス(腫れた眼を隠すためにね!)も必携ですよん。


※以前、「The Road」日本語翻訳版の感想記事を書いております。ご興味ある方は、どうぞ!
 
【 容赦無く残酷で途轍もなく美しい〜「ザ・ロード」】

コメント
>雪娘さん

こんばんは! 日本vsデンマーク戦のキックオフまで、遺すところ2時間ちょっとです。

デンマークはマッツのお国、ヴィゴの半分の母国、尊敬と憧れを捧げている国ではありますが、やっぱりそれはそれ、これはこれで、私は日本応援でございます。
ただ、だからと言って、相手チーム負けろとか、主力選手が出場しないといいのに、と云う発想が起きないのは、やはり相手がデンマークだから…かと。
うーんと正直に言っちゃえば、相手国によってはちょっぴりそんなことを思わないでもないかもしれない、うん、思うかも(どっちだ!)。

対戦相手が日本じゃなければ、もちろんデンマークを応援するところなんですが。抽選でそうなっちゃったんだから、これはもう仕方ないですよね。

   >とにかくお互いに点入れて、魅せて下さいかな。

もう、おっしゃる通りです!
素晴らしいパフォーマンス、素晴らしい試合が観たいな。


話が戻って「ザ・ロード」ですが。
はい、泣ける話です。
例え涙が零れなくても、悲哀に胸が潰されそうになります。でも、素晴らしいです。
そちらでも公開されると良いのですが、全国拡大公開ってことにはなかなかならないようですね。
また泣かせるのね・・・困った。
正直、ヴィゴなぜそこまで入ってしまうの?あぁ〜
そこがいいのですが。
DVDをひたすら待ちたいと思います。

さてさてきゃんさん、どっち応援するの?
わたしゃデンマークです(断言)。
って主将のトマソンがずっとファンだったからなんですが、
ここまでデンマーク特集ばかりだと疲れてもきます。
おいおい俳優も紹介してよ、みたいにね。
とにかくお互いに点入れて、魅せて下さいかな。
  • 雪娘
  • 2010/06/24 12:30 PM
>Lumos さん

こんばんは、いらっしゃいませ! いつも某所ではお世話になっております。
ブログのほうでのコメ返し、遅れがちで済みません。

想いの丈をただ叫んでいるだけの文章なのですが、少しでもご参考になったのなら良かったです。
身に余るお褒めの言葉も嬉しいです。今後も精進します。

原作もまた映画とは違う味わいがあり、とても素晴らしいですよ。
私は文章の好き嫌いで本を選ぶ傾向があるのと、翻訳文章と云うものがあまり得意でないことから、最近はほとんど邦訳本と云うものを読んでなかったのですが、この「ザ・ロード」は、すぐさま小説世界にのめりこんで読むことが出来ました。
記事にも書きましたが、翻訳文と小説の世界観が見事に一致しているのです。
お時間があったら、是非! お薦めです。
こんにちは。いつも読ませていただいてますが、コメントには初めてお邪魔します。
素晴らしいレビューです。どんな風に心動かされたか、どんなところが良かったのか、よくわかります。本当に文章に説得力があってお上手です。

試写会には行けず、公開後しか観ることができないのですが、こちらで書かれていたポイントを見逃さないよう、また、タオル持参で観に行きます。

本の感想も拝見しました。邦訳も読んでみようかなと思いました。

  • Lumos
  • 2010/06/20 8:04 PM
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